絶対音感

 今さらながらに、絶対音感についてである。音楽を専門としているが、自分にはあまり「絶対音感」なんて無いんじゃないかと思っていた。だから、以前、この題名のついた最相 葉月の本が出た時は肩身の狭い思いをした。コーラスの先生が「ワタシ、ゼッタイオンカンあるしぃ~♪」なんて話題に乗ってけなかった。ただ、毎日繰り返し弾くピアノの音は脳が記憶していて、正しい音は思い出せるし、思い出した音程は歌声に再現できたけれど。

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 弦楽奏者などに「絶対音感ありますか?」とたずねても、調弦は聴いた音に合わせたり、専門家で胸を張って音程に自信のある人って、あんまり周りにいなかった。

 声楽だと、恩師は一音のほんのわずかな上がり下がりを聴き分ける耳をもっていて、「あなた!そこ音下がってるわよ!!上よ、上!!!」と厳しい指導があった。一音の何百分の一の上がり下がりを指摘されたのだと思う。家のグランドの調律士さんなど、さらに微妙な音を聞き分けるテストを経て、この仕事に就いたと言っていた。
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 ところがである、こんな思いがひっくり返ることが起こってしまった(なんて大袈裟)。歯医者さんに久しぶりに行って歯を削られた時のことだ。(ちなみに私はお医者さんが大の苦手…)

 あのえもいえぬ「ピィィ~ン ピィィ~ン」とか「ドゥルルルルル~~ ドゥルルルルル~~」が、ドやミや1オクターブ高いドに聴こえてくるのである。えらいこっちゃ、「なんか私、音感ある」…ことはさらに複雑で、私はどんな曲も譜読みは固定ドだ。どこからか聴こえてくる音楽は、頭の中で勝手に変換されるのか、移動ドで聴こえる。脳の中でどんな処理が行なわれているかは想像の域を超える。

 何の音楽か解らない、歯医者さんのドリルがランダムに鳴らす移動ドの、理解不能な現代音楽を、「早く終わってくれえ~」という思いで聴き続けた。絶対音感の本の登場人物が、自然界の音までドレミで聴こえて「クルシカッタ」とカミングアウトしていたが、ちょっとだけその気持ちに寄り添えた。「うーん、こんな気分やったんやな…」

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 ドラム缶を叩く音や、コップの触れあう音、果ては自然が鳴らす風の音が、ドやミやソに聴こえるってホントかなと腑に落ちなかった。風は風の音に聴こえるし、さざ波や鳥の鳴き声も自然も音として聴こえる…これを十把一絡げにドレミの音程にひっくるめるなんてとんでもない。楽器会社の教育の弊害じゃないかとすら思っていた。

 ピアノ等は平均律で絶対的な音程ってあるけれど、弦奏者の音は、純正律でたどってゆくと、必ずしも正確と信じられている音程通りでなくなる。なので、「絶対音感」って言葉自体、ほんとかな~と思う今日この頃なのだ。指揮の巨匠オザワが師と仰ぐ齋藤 秀雄すら、曲のある箇所ではチェロの音程が低くなると言っていたから、そうなんだろう。コーラスも同じく、音のハマり具合を純粋に追求すると、伴奏ピアノの平均律にない音の溶け具合ってあると思うのだけれど。詳しい方にご教示頂ければ幸いだ。

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 ところで歯医者さんは、あと一回でお終いですと言って下さった。発声のために骨格が変わらないよう残して頂いてた親知らずだ。その修理だったのだけれど、歌うための身体のいろんな部品はたいせつにしなくっちゃと、改めて思った。声楽家は体が楽器なのです。チャンチャン 

プロフィール

Diva

Author:Diva
中野陽子

声楽家 ソプラノ歌手
声楽の健康科学 研究者


大阪教育大学大学院
教育学研究科
健康科学専攻
人間科学コース
発達人間学研究修了
修士(学術)


相愛大学音楽学部
声楽科卒 芸術学士
・山田耕筰の孫弟子
・声楽の恩師は
 109才まで現役指導を
 貫いた(故)嘉納愛子氏


サンフランシスコ
コンサーバトリー
音楽院(4年制音大)
にて研鑽を積む


ハルカス・サロン講師


大阪健康福祉短期大学
アバンスペース
健福興隆ハルカス大学
講座 講師

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