歌わなかったアメージング グレイス

東日本大震災から丸3年…。
あの年の3月、ポスドク(博士研究員)だった長男は、
研究の居を据えるためネブラスカへ旅立った。
福島原発でメルトダウンの影響により
3号機建屋が爆発して大量の煙が上がった時間帯、
成田の飛行場で乗り継ぎ機を待っていた。

アメリカに着くと、日本人というだけで、
たいそう丁重に迎え入れられたらしい。

同じ時期、ミュージカルスターを夢見るりらの芸術学校卒業生を
ボイストレーニング教室で指導していた。
新聞配達をしながら渡航費用を貯める堅実な青年だったため、
教室にはアシスタントとしてレッスンに参加させていた。

彼も長男に少し遅れ、憧れの地アメリカへ旅だった。
この二人は お互いに面識はないが、
渡米前、長男の現地アドレスを渡して伝えておいた。
「もし、地球が滅亡することがあったら、
 二人で手に手をとって日本へ帰ってくるんやで…!」

もちろん冗談。しかし、あの頃の日本は、
国全体に 重苦しい黒い雲のような空気が 覆いかぶさっていたのだ。

つい先日、ケイタイ(私はいまだにガラケー)に
不審な外国番号の着信があった。
「アヤシイからほっといた方がいいですよ」
忠告して下さる方がいた。
ほうっておくと、次にメールの着信音が鳴った。

『先生、ショーが決まりました!!
 KING & I という作品で、
 場所はフロリダのジュピターというところです。
 夢はまだまだ先なんですが、アメリカでの第一歩です。
 頑張ってきます!』

ブロードウェイでがんばっているとは聞いていた。
少しずつ小さな役にも恵まれていたらしい。
でも、随分長いこと ナシのつぶてだった。
若者だからしょうがないか…
ただ 大都会で転落の人生だけは歩まないで と願っていた。

連絡がなかったのは、そういうことだったのか。
先生にグッドニュースを報告できるようになるまでは ガンバル☆
おお、よくぞやった 教え子よ!

グッドニュースの届いたあくる日 すぐに、
彼と一緒にボイストレーニング教室で練習していた
受講生の方々に報告した。
彼女達は、カフェで飲むくつろぎのコーヒー一杯をがまんして、
「たかしクン募金」なるもので渡航費用等を応援して下さったのだ。
心よりお礼をのべたい。

「いいのよ~ 大阪のオバちゃんでよろしくってよ~~
自らをオバちゃんと称する彼女達は、
若手の可能性を育み文化を支える本物のマダム達だ。

おかげさまで、ミュージカルスターの卵は海外でチャンスを掴んだ。
加えるに、ポスドクの長男も在米中にボストンにおもむき、
日本企業への就職をゲットして帰国した。
地球もこの3年間で滅亡しなかった(?!)

今日は、
全館オープン・ハルカスのおひざ元でボイストレーニング講座だ。
震災・津波への鎮魂歌としてアメージンググレイスを
教材にしようかと思ったが、あえて取り上げるのはやめた。
東日本大震災を深く心に置いて、
今ある持ち場を守り、普段通りに、今日一日を過ごそうと思う。
3・11を経験しなかった関西は、
一人一人の名もなき者たちが 強固な日本の下支えになって、
東日本へエールを送ろう。

それこそ日本中のどなたもが、
地中に根っこを張って冬を耐え抜いたような3年間。
花は咲く … 春の兆しが感じられる季節を迎える。


プロフィール

Diva

Author:Diva
中野陽子

声楽家 ソプラノ歌手
山田耕筰の孫弟子
声楽の健康科学 研究者


相愛大学音楽学部
声楽科卒 芸術学士
・109才まで現役指導者
 故 嘉納愛子氏に師事


サンフランシスコ
コンサーバトリー
音楽院[4年制音大]
にて研鑽を積む


大阪教育大学大学院
教育学研究科
健康科学専攻
人間科学コース
発達人間学研究修了
修士(学術)


ハルカスを拠点として、マスメディア・デパート・大学関連講座の講師をつとめています


●読売新聞大阪本社・讀賣TVを運営母体とする文化センター講師


●ハルカス近鉄本店 文化サロン他 講師


●大阪健康福祉短期大学
健福ハルカス大学 講師


声楽を軸に、歌う日々やサンフランシスコ暮らしの懐古をエッセイ風に綴ります。

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