106歳 バンザイ

106歳の恩師に曲を聴いて頂くため、長いブランクを破り、音大時代の同級生ピアニストと伴奏合わせをしました。我恩師の嘉納愛子氏は山田耕筰の愛弟子です。先生がご長寿なので、こんな幸せな門下生は世界でもめったに例がないと思います。


先生に聴いて頂くための何十年ぶりかの音合わせ。ピアノの伴奏は、ひたむきで一途なMちゃん。時を経て合わせるその音は、優しく深く時に力強い音色で語りかけてきました。音楽の道を究めようと歩んだ長い年月が感じられる音楽でした。


音大では、声楽科の学生がピアノ科の学生に、伴奏をお願いします。一回生の演奏試験から卒業演奏まで、ほぼそのコンビで通すのです。音大生時代の彼女は、シビアに改善点を指摘し曲を盛り上げてくれるありがたい存在でした。今回は、何より、教授嘉納愛子氏のレッスンを一緒に受けたという共通項で 全てがすぐ通じ合いました。


彼女は、自分の演奏に、変換点があったことを話してくれました。 ポーランドへの研修の折に、指導の先生が「あなたのピアノは80%の演奏だ、100%で弾きなさい」とおっしゃったそうです。伴奏者は歌手に沿わせるため、聴きながら控えめな演奏になります。その習慣を先生はご指摘なさったのでしょう。伴奏も大好きな彼女は、以来、自分を全て出す独奏のスタイルへと方向変換したのだとか。


時を経て合わせたピアノ伴奏が、主体性を持って優しい音色で包んでくれたのは、彼女の歴史にそんな変遷があったからなんですね。歌曲とは、自立した歌とピアノの芸術と芸術が融合だということを、今回の作品を通してさらに深く知ることができました。そうでなければ、音にホントの優しさは生まれませんものね…


若い頃の独唱は、主人公は私!とばかり、ガムシャラに歌っていた。大人になると、意識は、歌とピアノの対話へと変わってゆきました。今 ここに さらなる伸びしろがあろうとは、恩師のおっしゃった
『百歳には百歳の歌がある』…まさにこのことだったのですね。


M嬢は現在、生まれ育ったお家で一人暮らし。愛情のたっぷり詰まる実家で、庭の緑の木々、2台のグランドピアノと共に、音楽と暮らす生き方がステキです。ゆるやかで静かな時間が流れていました。


恩師宅訪問をセッティングして下さった、この幸せな全ての始まりの張本人は、洋子先輩。遠路はるばるMちゃんのお宅を訪ねると、先輩が、この猛暑の中を出迎えて下さいました。キリリと そして どーんとした確かな存在に、学生時代の故郷を感じた…なんて、ちょっと 感激し過ぎでしょうか?!


帰り際、先輩の隠れ家サロン『アンダンティーノ』へお邪魔させて頂きました。仕事・音楽・家庭がバランス良く調和した暮らしぶりに、目からウロコがポロリ。教師の職を潔く打ち切り、新しい世界へ飛び込まれましたが、軌道に乗せた仕事と声楽の間に境目がありません。へぇ~、こんなスタイルがあるんだ~と、ライフワークを軸に回る暮らしに拍手です。 


私達、嘉納門下!! 真夏の汗だくの一日、爽やかないい汗かいて、門下生の絆って素晴らしいと心底思えた充実の一日でした。洋子先輩とMちゃん、ありがとう。


カウントダウン3・2・1…レッスン日が近づいてきます。お宅訪問だけれど、ホームレッスンで慣れ親しんだあの部屋は、やはりお弟子にとっては懐かしいレッスン室。日本全国から耕作歌曲の指導を乞いに集まる「からたちの花」。そしてオペラアリア。106歳の恩師の教えを心待ちに、只今レッスンの真っ最中♪



プロフィール

Diva

Author:Diva
中野陽子

声楽家 ソプラノ歌手
声楽の健康科学 研究者


大阪教育大学大学院
教育学研究科
健康科学専攻
人間科学コース
発達人間学研究修了
修士(学術)


相愛大学音楽学部
声楽科卒 芸術学士
・山田耕筰の孫弟子
・声楽の恩師は
 109才まで現役指導を
 貫いた(故)嘉納愛子氏


サンフランシスコ
コンサーバトリー
音楽院(4年制音大)
にて研鑽を積む


ハルカス・サロン講師


大阪健康福祉短期大学
アバンスペース
健福興隆ハルカス大学
講座 講師

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